〇テーマ:
「近世大名家葬制と祖先祭祀~神儒仏の受容とその変化」
〇実施内容:
主に、九州(佐賀藩鍋島家・小田原藩大久保家・石川家・熊本藩相良家・岡藩中川家)、中国(津和野藩亀井家・宇和島藩伊達家・吉田藩伊達家・津山藩松平家・新見藩関家)、近畿(北条家・岸和田藩岡部家・山口家亀趺碑)、関東(久留里藩黒田家・飯能中山家・津軽家)を対象としました。
佐賀藩和多田亀趺碑・大久保家墓所の調査では、九州と大阪の関係者に共同で実測調査をお願いしています。(小林昭彦氏・豊田徹士氏・吉田博嗣氏・三好義三氏ほか)また、関東の調査では、千葉県東庄町福聚寺の墓所調査実施において増井有真氏に実測調査を手伝って頂いた。
その他の、関西地区では、特に東大阪並びに京都における墓所調査・寺院関連調査で、三好義三氏に手伝って頂いた。東大阪周辺や法雲寺亀趺碑・山口家亀趺碑・京都本禅寺・相国寺・大徳寺・浄住寺亀趺碑実測調査等実施しました。
〇事業の効果
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- 【事業効果】
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- 今回の調査では、近世大名家における思想の実像に着目するために、墓所調査並びに婚姻関係から派生する問題に着目しました。
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- 佐賀藩唐津市和多田に所在する巨大な亀趺碑の存在と、碑の直下にある大久保家関連墓所の実態を調査し、更には唐津から転封により旧領出る小田原藩を治めることになった大久保家の一族の畿内における墓所の調査と合わせ、」婚姻や養子縁組が古くからあった石川家墓所が同じ寺を菩提寺としていたことは重要な知見でした。また、大久保家の思想的な影響は、婚姻関係のあった水戸家筆頭家老家である中山家の墓所を調査することで新たにその思惟の形成には親族関係や、小忍関係による同盟形成と強い因果関係を指摘したいと思います。
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- 大久保家四代大久保忠朝が造立した遠祖をたたえる亀趺碑同様に、中山家においても、初代中谷信義をたたえる亀趺碑を造立しており思惟の共通性が窺えます。特に仏教寺院に墓所を築くのですが、亀趺碑の造立など中国的な思惟は儒教を背景とした思惟が指摘できます。つまり、幕府との関係から菩提寺は重要ですが、一族における祖先祭祀においては、儒教を基調としながら神道との関連も密接に有して、祖先祭祀が儀礼的に行われたことが明らかでした。
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- これらの思惟を背景にした同盟関係は、親族形成、養子縁組などによる「家」の存続に対する意識を高めました。一方では、「家」の存続意識は、幕府への忠誠、奉公との関係においても有効に働くことになっていたことを、結論的に得られました。別紙論考にまとめております。