2020(令和2)年度(第22回)7.認定特定非営利活動法人 未来といのち

〇テーマ:

福島第一原子力発電所事故による帰還困難区域の事故前の地域社会の様子と儀式文化の記録の保全」

〇概要:

2021年6月から2022年5月初めまでに(予定では3月まででしたが3月16日東北地方の地震の影響で期間を延長してしまいました)、以下の事業により被災地の支援を行った。
福島第一原子力発電所事故により、10年間以上の避難を余儀なくされている浪江町と飯舘村の帰還困難区域、同様に立ち入り禁止になってから現在は帰還しても復旧が困難な葛尾村と川俣町山木屋地区が対象。これらの地区では伝統芸能や、祭事、冠婚葬祭、建前などの儀式文化が震災の直前まで代々地域社会の中で継承されていました。
その中でも特に浪江町津島は福島県の重要無形文化財にも指定される田植踊や神楽七芸などがあり、震災直前まで隣近所で葬祭なども役割を分担しながら助け合って執り行っていた地区です。そして互いの協力の結果として近隣の地区も含め、多くの映像や写真などの記録も保存されていました。今回はそれらが原発事故で長期間の避難によりカビなどで修復が困難なほどに損傷していたVHS350本,オープンリールテープ4本を、クリーニング、分解掃除をし、DVDにデータを変換し、HDDに保存しなおす作業を行いました。また、浪江町の帰還困難区域の古い写真なども専門の業者によりスキャニングして二度と戻ることのない地区の様子を保存しました。

〇事業者のコメント
    • ・失われかけていた文化的な記録、地域社会の人たちの震災前の楽しかった思い出の記録を保全することができ、原発事故で故郷を追われている人達の心の中の故郷を守るための支援ができました。

 

    • ・また、伝統芸能や儀式文化などが何百年も継承されてきた背景には、自然と協調しながら、因習ではなく個人が意思を持ちながら協力しあっていた層の厚い地域社会があったからと考えます。今回の事業で日本の原風景のすばらしさを人類の資産として次世代に残すことの一助にもなりました。

 

    • ・実際には、前年度も同様に、同様の対象地区の映像の保全をさせていただきましたが、それらを元に、旧知の地域社会のメンバーで集うこともでき、また、ダビングしあって思い出を共有している方もいらっしゃいました。心のよりどころであった地域社会が崩壊寸前という厳しい現実です。今回記録を保存したことでこの地の方たちがせめて自分たちの故郷がどのようなところであったかを100年先の子孫たちに残したいと望む想いへの支援になったと思います。

 

    • ・この地の方達は、いまだに日々被災が継続しています。離散している地域社会でどのようにこの記録を役立てていかれるかは今後徐々に決まっていくのではと考えます。話を聞いて分けてほしい等、離散した住民同士の交流が生まれている。