○研究テーマ
『知日派中国人・周作人の婚礼に関する言説の研究』
○事業内容
(1) 学会発表「留学時代の周作人の女性観に関する一考察―『天犠報』とのつながりを中心に―」
2023年4月20日 海域交流と国際文化学会 会場:東北大学及びオンラインのハイブリット開催 参加人数20名
(2) 論文発表「「貞操論」発表以前における周作人の女性観について―『天犠報』掲載記事を中心として―」『比較文化研究 = Studies in comparative culture』(153)pp.211-224,2023年10月31日
オープンアクセスURL: https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I033163222
(3) 博士号学位取得論文『周作人の女性観に関する考察』東北大学 博士(国際文化)第236号 2024年3月26日
(4) 論文発表「周作人による婚礼問題の分析とその提言―六禮における「納徴」を中心に―」『国際文化研究(オンライン版)』30号pp.1-14,発行年2024年3月
オープンアクセスURL: https://tohoku.repo.nii.ac.jp/records/2001160
○事業者のコメント(事業実施により得られた効果)
(1) 学会発表「留学時代の周作人の女性観に関する一考察―『天犠報』とのつながりを中心に―」
本発表では、周作人の留学時代における女性解放運動の中で、彼が雑誌『天犠報』に掲載した中国婚礼における問題点の解決策について検討を行った。特に本発表では、中国婚礼の弊害とされてきた聘財の高額化の問題が売買婚的問題の根源であったことを周作人が解明した点を中心に紹介した。そして、その是正策としての自由恋愛による結婚の重要性を再確認させる契機を、雑誌『天犠報』誌上での議論がもたらした点を明らかにした。
(2) 論文発表「「貞操論」発表以前における周作人の女性観について―『天犠報』掲載記事を中心として―」『比較文化研究 = Studies in comparative culture』(153)pp.211-224,2023年10月31日
本論文は、(1)学会発表の内容と、当学会における質疑応答を踏まえて加筆修正し、活字化を行ったものである。
(3) 博士号学位取得論文『周作人の女性観に関する考察』東北大学 博士(国際文化)第236号 2024年3月26日
本論文は、世界で初めて「周作人の女性解放運動の体系的研究」をまとめたものである。周作人の女性解放運動は、中国や日本の学界で、ある程度知られている。しかし、周作人が一生涯を掛けて取り組んだ女性解放運動の全貌を明らかにしようという試みは、現在まで存在しない。その理由は検討すべき内容と分量があまりにも多すぎて現実困難と言われていたからである。そのため先行研究は、部分的に考察した各論ばかりであり、日本や中国の学界から「体系的な研究の必要性」が叫ばれていたものの、これを実現するには、強い精神力と強靭な体力が求められるため、斯界では実現しなかった。このような中国や日本の研究者が尻込みするテーマに取り組み、その目的が成就したため、本研究は、①澤柳記念DEI奨励賞(課題名 周作人の女性解放運動の体系化に向けた研究)、②東北大学総長賞(課題名 周作人の女性観に関する考察)を受賞し、これらの業績を上げた報告者に、③東北大学藤野先生記念奨励賞が受賞された。
(4) 論文発表「周作人による婚礼問題の分析とその提言―六禮における「納徴」を中心に―」『国際文化研究(オンライン版)』30号pp.1-14,発行年2024年3月
本論文は、(1)中国の歴史における「納徴」問題(日本における結納)の発生と深刻化の過程、(2)周作人による認識と、その弊害を打開するための提言について分析を試みた。(1)では、納徴期の聘財(結納金)が婚約成立を示す物証として大きな意義を持つこと、聘財が価値財であったことから両家の間での争奪が深刻化し、明清期には経済的困難から婚姻不能の男女が続出し社会問題化していた。一方、(2)では『天犠報』に掲載された周作人の献策「防淫奇策」から、姦淫の根本的原因が古来中国の婚姻のあり方に問題があること、男女の婚姻における愛情の重要性を明らかにし、その提言が中国婚姻法にどのような反映を見せていたのかを分析した。