2018(平成30)年度(第20回)14.特定非営利活動法人 グループゆう(認定NPO法人)

〇テーマ:

地域の多様な孤立層を対象に「地域食堂」が行う“セーフティネット事業”

〇概要:

地域活性化を目的として、地域内にある神社の伝説を元に大足半を製作し、祭で奉納していたが、近年は藁や人的確保が困難で大足半の作り替えが実施できない状況にあった。しかし、今回、次世代の若者の間から継承したいとの声も上がり、この機会を地区尚世代交代の加速時期とし、新たな地域のつながりを目的に大足半の作り直しを行う。

〇実施内容:
事業内容と目的
地域にある食堂で、地域の多様な住民が自己選択して参加できる楽しい企画を用意し、参加を通して知り合いになり、困ったときに相談したり見守りができる関係性が産まれ、孤立を予防するセーフティネットになる。
発信元
キッチンぽぽ(地域食堂)宮城県仙台市泉区南中山3-15-15
協 力
町内会・・町内会の協力で毎月町内にチラシの回覧をして頂けることが大変効果的。
協 働
包括支援センター・・月1回の高齢者サロンの協働、地域情報の情報交換
仙台市泉区地区社協・・さろんアドバイス、ひきこもり支援情報の提供
事業内容
詳細は以下に記載
参加者
町内に住む人が多いが、体操教室やカフェの企画には、町内会外の参加者も増えてきた。
参加者数
助成事業の参加者:各平均5~8名


〇事業の効果:

1)食育企画…安全食材で手作りの「日常食」を提供しているが、今回“薬膳”と“地場産品”“自分でチョイス”をテーマの新企画を実施した。
□地場産品を使ったディナーや薬膳ランチの開催・・・ワンデイシェフによる薬膳ランチの試食会や、地場産品の食材を使用したランチやディナーを定例で実施することができた。(延200人)
□食材の産地への訪問ツアー・・・紅葉の季節に野菜の産地に出向いて、地場産品で創ったランチを楽しむバスツアーを開催し、奥野参加があった。産地とは、その後のキッチンぽぽのバザーやまつりの時、産直野菜市も実施し、つながりが深まった。(26人)
□子ども食育企画・・・子ども対象の企画は、講義をメインにするのではなく、「主食」「おかず」「デザート」のコーナーからバイキング形式に自分の好きなものをチョイスし、それぞれの弁当箱に詰めて、管理栄養士から栄養バランスのアドバイスと「ブロッコリー一つ追加ね!」「君はとまとかな!」。参加型の弁当作りで好評だった。(10人)

2)食材の保冷庫の整備
□保冷庫の整備により、保存食材の量や安全が確保され、メニューの広がりや買い物頻度の効率化が実現し、調理環境が大幅に改善された。

3)サロンでの健康体操教室の開催
□座位の企画(麻雀・折り紙・絵手紙等)が主だったサロン企画に体操教室が加わり、近所が会場という気軽さと、講師の明るく軽妙なリードで笑い声の響く健康体操が開催できた。当初の計画より開催頻度が増え、参加者も定着してきた。(延150人)

4)起業のインキュベート拠点
□個人:キッチンぽぽが将来「食」の関わる起業をめざす女性たちの実体験拠点になった。
・企業を目指す1人は、「ワッフルカフェ&パスタランチ」企画を実施。その後、調理の技術と幅を広げることを目指してホテルでの修行へと巣立っていった。(カフェ参加者延80人)
・また、家業を担いながら幾つもの夢を描くもう一人は、ベーグルのオリジナルサンドが好評で、毎回盛況だったが、もう一つの夢を実現すべく、奮闘中である。(ベーグルカフェ参加者延45人)
それぞれが、自分の目指す方向性を決めるための、インキュベート拠点になり得たと考えている。
□福士事業所:障害就労支援B型事業所の工賃向上に向け、起業の視点を学び、焼菓子の商品改良を行った。
・デザインおよび商品改良の円問かを講師にクッキーの形や量、パッケージデザインを統一性のあるものに改良し、販売の在り方も改善し、売り上げが向上した。また異業種交流会で商品紹介のプレゼンテーションを行う機会を得、福祉関連以外の人達との交流で職員の視野が広がった。

5)引きこもり情報交換会
□法人と地域の関係機関との情報の共有・・・法人職員、地域包括支援センター、社会福祉協議会と情報交換を行い今後の地域課題として「5080問題」に向き合っていくことを共有した。
□現状の把握:
研修会への参加・・・県内情報:7月7日:NPO法人TEDICの取り組み
国内情報:9月29日:NPO法人ひきこもり家族会連合会
視察見学実施・・・秋田県の藤里社協(区写経職員を含む3名が研修を受けた。)
□これまでの研修や先進支援事例から学んだことは、当事者主体の支援の重要性であった。当法人の発達障害者支援の経験が必ずしも役立つケースばかりではないことの気付きは収穫で、今後新たな支援の方向性を模索する必要性を強く感じた。
□秋田の藤里社協の取り組みは当事者の気持ちに添った丁寧で、斬新な活動であった当法人の地域に暮らす多様な人を対象にした支援の方向性を先導的に行う事例であり、大変勇気を頂けた。
□視察研修の後、地域包括支援センターや民生委員に情報提供をしたところ、今後地域でも必要になるとの共感を得ることができ、2月に地域で開催する情報交換会で秋田の事例を紹介し、南中山地域で身近な取り組みを開始しようということになった。
□地域との連携で5080問題に取り組む基盤整備ができたが、準備を行っていた中で、感染症拡大予防の為、人の集まる事業の全てが休止となった。

=コロナ禍での今後の事業について=
グループゆうは地域への配色サービスから始まったNPO法人で、顔の見える関係性作りを20余年継続し、対面での支援に必然性と必要性を感じていました。しかし、新型コロナウイルスの出現によって、これまでの対人支援のあり方やかかわり方を改めて考えさせられることになりました。
今回の助成事業開始時は、「地域の集いの場」であるサロンや地域食堂でのサービスメニューの充実をはじめ、地域でも課題になりつつある“引きこもり”の成人の社会参加の場をつくることも目標におき、その環境つくりをしようと考え、実現しつつありました。しかしコロナ禍で、すべての国民の在宅を推進する方向性が出されたとき、私たちは、在宅での過ごしに戸惑いを感じるに違いない現在の利用者に対し、在宅で役立つ支援メニューやプログラムを用意していないことに気付かされました。と同時に、ひきこもりといわれている人を外に出すことばかり考えていたのではないかということにも気付かされました。本人本位の支援を目標にしていたはずだったのに、支援者本意のものだったのではないかと振り返っています。
今回いただいた助成のおかげで、地域の居場所の継続が実現し、町内会はじめ大きな連携の輪がひろがり、5080問題に地域で取り組む合意形成を得ることができました。この財産を、コロナ禍とその先、地域でどう生かしていくかを宿題とさせていただきます。
幸い、感染の不安を抱えつつも、利用者の日常を継続して支援したいという気持ちを持ち続ける仲間がいることが今の救いです。
今後は、世界の知恵を集め、柔軟な思考に切り替えて、新たな支援の方法を産み出す努力をし、だれもが取り残されることのない公平な地域をめざして今まで通り進んでいきます。
ありがとうございました。