2019(令和元)年度(第21回)11.認定特定非営利活動法人 未来といのち

〇テーマ:

「福島県原子力事故による帰還困難地区の住民による事故前の地域社会の映像の保全」

〇概要:

福島第一原子力発電所事故による避難地域の中でも9年間以上帰還できない地区がある。そしてその地区は300年以上も前から歴史と文化があり、豊かな自然とともに生きてきた還元型の生活に根差した支配的ではなく協力的かつ各人の自己を大切にする理想的な地域社会を持っていた。

そして東北地方でも屈指の伝統芸能が継承されている地域であった。また、どこの家でもいつでも食事ができるほどの親しい人間関係がある旧家が多いためか、冠婚葬祭、歳時、伝統芸能等の文化や、学校教育・子供育成・敬老等への地域全体での参加等が盛んであった。

今回は、それらの記録・撮影をたまたま引き受けていた住民が編集・保存していたVHSテープ等において、避難の長期化によりカビで損傷していたものをリメイクしていった。

当初は5,000本程度あると言われているVHSより約520本のリメイクを予定していたが、実際はカビ等の損傷が激しく、時間も要してしまい、全部で429本のリメイクを施行した。

リメイクは二本松市の映像会社への依頼となった。東京の大手の会社の方が見積もり等は安いものの、実際はカビが酷いと扱ってくれない場合が多かった一方、同じく県内で被災経験もあり、なんとか未だに帰還できない地区の役に立つようにと、困難な部分もあったが依頼を引き受けてもらった。

現在は各機器を通して閲覧が可能なようにMP4データ形式で保存した。なお、元のVHSもカビを取り、持ち主の元に返却した。

〇事業者のコメント:

・失われそうになっていた貴重な記録が一部でも保全ができた。
・リメイクした伝統芸能や歳時の記録を、避難住民が集まる機会に見せることができた。
・以上のことで、特に文化継承や地域社会の世話役、ビデオを作成していた者を中心に離散した地域住民が交流する場が生まれた。
・実施前には諦めていた多地域社会での記録が保全されたことは、地域社会の中での個々の失った記憶を取り戻したことに繋がり、心の安定になると考える。
・実施前には、薄れていくばかりだった記憶を蘇らせて、故郷への想いを諦めないための力になったと考える。
・リメイクされた映像を見た者から、話を聞いて分けてほしい等、離散した住民同士の交流が生まれている。

〇掲載資料: